機能性ディスペプシアとは?
こんにちは、仙台薬師堂いしばし消化器 内視鏡クリニック院長の石橋です。連日のようにコロナ感染のニュースが流れており、日々気の抜けない状況が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?前回は大腸の機能性胃腸症として代表的な病態である過敏性腸症候群についてお話ししましたが、今回は胃の機能性胃腸症として代表的な機能性ディスペプシアに説明したいと思います。当クリニックにも、この機能性ディスペプシアが原因と考えられる症状で来院されている患者様が、比較的多くいらっしゃることを日々の診療で実感しています。
1)機能性ディスペプシアとは?
機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD)とは、胃部痛や胃もたれなどの症状が慢性的に続いているにもかかわらず、採血検査や胃カメラ検査を行ってもその原因を特定できない病態を言います。機能性ディスペプシアでは、食事をした後の胃もたれ感や早期満腹感,心窩部の焼けるような痛みが症状として現れ、慢性的に続きます。
2)原因
機能性ディスペプシアを起こす要因には、胃の運動機能の障害、内臓の知覚過敏、心理社会的なストレスなどが考えられています。
①胃の運動機能の障害
食事をすると、胃はその食べ物を貯めるために緊張を緩めて膨らみ、これを適応性弛緩と言いますが、胃の蠕動で適量ごとに十二指腸へ食べ物を送ります。機能性ディスペプシアの患者様ではこの適応性弛緩が不十分であるために、胃に十分な食べ物が貯められなかったり、適切な胃の蠕動が出来ないことにより、胃もたれなどの症状が生じます。
②内臓の知覚過敏
また胃の知覚過敏が起こり、胃がパンパンになったり、刺激の強いものが胃に入ってくることで、症状を起こしやすい状態になっています。
③心理社会的なストレス
また、睡眠不足や過労などの身体への負担や、悩みやストレスなど精神面での負担があることも機能性ディスペプシアの原因になります。不安やうつなどの気分の不調も症状に影響を及ぼすものと考えられています。
3)症状
機能性ディスペプシアはその症状から、次の2つに分類されています。しかし実際には、以下の2つの症候群が入り混じった症状が現れ、明確に線引きできないケースも多くあります。当クリニックでも、機能性ディスペプシアと考えられるケースでは、患者様の訴えられる症状は様々であり、問診のみで判断が難しいこともあります。
①食後愁訴症候群
食事をした後の胃もたれ感や、早期満腹感(食事の途中でお腹がいっぱいと感じ、十分な量を食べられないこと)などの症状を特徴とするものです。
②心窩部痛症候群
心窩部(みぞおち付近のこと)の痛みや焼ける感じなどの症状がみられるものです。これらの症状は、食事摂取の有無にかかわらず現れます。
4)検査・診断
①問診
機能性ディスペプシアが疑われる患者様には、まず自覚症状を詳しく聞いていきます。どのような症状が、どのような頻度で、どの位の期間続いているのか、症状はどのような時によく起きるかなどを丁寧に質問していきます。またその原因にストレスや心理社会的な要因が関わっていることもあるため、過労や睡眠不足、精神的なストレスがないかも聞いていきます。
②検査
胃がんや胃潰瘍などの症状を起こしうる病気(器質的疾患)がないかどうかを調べる重要な検査が胃カメラ検査です。通常、機能性ディスペプシアの患者様では胃カメラ検査で異常を認めないことが多く経験されますが、器質的な疾患が隠れている可能性も否定できないことから、しばらく検査を受けていない場合には一度胃カメラ検査を受けて頂くことをお勧めしています。そのほか必要に応じて、血液検査や腹部超音波検査(腹部エコー検査)、CT検査などを行います。腹部エコー検査についても症状のある方には積極的に行っておりますので、腹部症状などが続いている方は、いつでもお気軽にご相談ください。
5)治療
機能性ディスペプシアの治療は主に薬物治療や生活指導になります。
①薬物治療
症状に合わせて薬剤を選択して治療を行っていきます。心窩部痛や心窩部の灼熱感などが主な症状の場合(心窩部痛症候群)は、胃酸の分泌を抑える酸分泌抑制薬を第一選択として使用しています。また食後の胃もたれ感や早期満腹感が主な症状の場合(食後愁訴症候群では、胃の動きを促進させる薬を用いて治療を行っています。しかし、実際には心窩部痛症候群や食後愁訴症候群が入り混じった症状が現れ、その両者を明確に分けて治療することが難しいことも多いため、個々の患者様の症状に合わせて適宜治療薬を選択し、何種類かの薬を併用して使用することもあります。また、胃もたれ感などの上腹部のさまざまな症状に対して、六君子湯という漢方薬の効果が期待できると報告されており、当クリニックでも必要に応じて六君子湯の処方も行っております。悩みやストレスなどの心理的な負担や、不安やうつなどの気分的な不調が原因と考えられる場合には、抗不安薬や抗うつ薬を用いることもあります。また、胃カメラなどの検査を行うことで症状の原因がわかることにより不安が解消され、症状が改善されることも期待できます。
②生活指導
機能性ディスペプシアの症状は、食生活をはじめとした生活習慣とも密接な関係があります。脂肪の多い食事はカロリーが高く胃の動きを抑制してしまう作用があるため、胃もたれなどの症状を起こしやすくなります。さらに胃と食道の境目にあり胃酸の逆流を防いでいる筋肉(下部食道括約筋)を緩めてしまう作用もあるため、揚げ物、炒め物、生クリーム、クッキーなど脂肪の多い食事を避けるよう心がけましょう。また、アルコールや香辛料、炭酸飲料、コーヒーなどは胃酸の分泌を刺激し、症状を悪化させることもあるため控えるようにしましょう。食事をよく噛んでゆっくり食べることも、過食を防ぎ症状を和らげるために有効とされています。一回に食べる量を抑え回数を増やすことで症状を改善させることができる場合もあります。昔から「腹八分」と言われていますが、このような症状に対する生活の知恵かもしれません。
今回は機能性ディスペプシアについてお話しさせていただきました。もう3週間ほどで年末年始になります。今年はコロナ禍もあり不要不急の外出自粛で家にいることも多いと思いますが、食べ過ぎ飲みすぎに注意して年末年始をお過ごしください。
過敏性腸症候群ってどんな病気?
少しずつ日中の寒さが続くようになってきましたが、皆様はいかがお過ごしですか?全国的に寒い時期になり、以前より予想されていたように新型コロナウィルス感染症が拡大してきておりますが、当クリニックにおきましても、検温・アルコール消毒の徹底、頻回の換気、発熱患者様の診察、内視鏡検査・治療時のPPE(個人防護具)の使用などにより、できる限りの感染対策を行っております。
最近は、大腸カメラの予約が増えてきておりますので、本日は大腸の病気についてお話ししたいと思います。
過敏性腸症候群という病気についてご存じですか?過敏性腸症候群とは、大腸カメラなどの検査を行っても腫瘍や炎症といった器質的疾患が認められないにもかかわらず、下痢や便秘などの便通異常や腹痛、腹部膨満感などの下腹部の症状が持続する病態をいいます。生命に関わる病気ではありませんが、突然起こる腹痛や下痢、腹部不快感などにより、QOL(生活の質)が低下することが問題となります。過敏性腸症候群は20~40歳代の方に多く、本邦においては10~15%程度にみられるとのデータもあり、やや女性に多くみられます。男性では慢性的な下痢を繰り返す下痢型が、女性では慢性的な便秘を繰り返す便秘型が多いとされています。
過敏性腸症候群の明らかな原因はいまだ不明ですが、大腸や小腸の運動機能の異常や知覚過敏、精神的なストレス等が関係しているとされており、複数の要因が組み合わされることによって引き起こされると言われています。また急性の感染性腸炎をきっかけにして過敏性腸症候群が起こったり、ストレスや生活習慣により病状が悪化したりする場合もあります。
過敏性腸症候群はメインとなる症状によって、下痢型、便秘型、混合型(下痢と便秘が交互に繰り返す)、分類不能型に分類されます。
①下痢型
突然に起こる腹痛や下痢を特徴とし、外出時に便意や腹痛を催すことで、通勤・通学などに支障をきたします。大腸のぜん動運動が過剰になることにより、大腸での便の水分吸収が不良となり、軟便や下痢が出現します。
②便秘型
便秘を主な症状とするタイプで、大腸が緊張状態となることで(痙攣性)、大腸のぜん動運動が減少し便秘が出現します。さらに便が長時間大腸に停滞することにより水分吸収が促されて、コロコロとした硬い便になります。
③混合型
下痢と便秘を数日間ごとに交互に繰り返すタイプをいいます。
④分類不能型
上記のいずれのタイプにも該当しないものをいいます。
過敏性腸症候群の診断には、自覚症状に基づいて診断するRome IV基準が用いられますが、繰り返す腹痛が最近3ヶ月の間に概ね1週間に1回以上あり、1)腹痛と排便は関連している 2)排便頻度の変化を伴う 3)便形状の変化を伴う症状のうち、2つ以上に当てはまる場合に過敏性腸症候群と診断されます。ただし過敏性腸症候群と似たような症状を呈する病気として、細菌性・ウィルス性の腸炎、潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性の病気や大腸がんなどの病気の可能性も考えられ、血液や便検査、レントゲン検査、大腸カメラなどの内視鏡検査などを行って、他の病気が潜んでいないかを調べることも大切です。当クリニックでもこのような可能性が疑われる場合には、積極的に必要な検査を施行して、的確な診断ならびに早期の治療につなげていけるように診療を行っております。
過敏性腸症候群は、生活習慣の乱れや精神的なストレスなどで症状が悪化することが多いことから、まずは生活習慣の改善やストレスの軽減を図りますが、運動療法も症状の改善に有効とされています。また、症状のタイプに合わせて薬物療法も併用します。
①食事療法
炭水化物や脂肪分の多い食べ物をとることが症状を悪化させる要因となることがあることから、このような食べ物は控えるようにしましょう。また香辛料やアルコール、コーヒーなどが症状悪化に関係している場合もあり、この場合も摂取を控えるようにします。下痢に対しては、適量の食物線維をとるようにしながら、下痢を引き起こすような冷たい飲み物や牛乳の過剰な摂取は避けるようにしましょう。便秘に対しては食物線維を積極的にとり、便の量や硬さを整えるように心がけましょう。
②運動療法
適度な運動を取り入れることにより、腸の動きを整えましょう。また適度な運動はストレス発散にもつながり、過敏性腸症候群の発症や悪化の原因となるストレスを軽減させることができます。
③薬物療法
生活習慣の改善で症状が良くならない場合は、薬物療法を行います。
1)セロトニン3受容体拮抗薬
腸に存在する神経伝達物質であるセロトニンをコントロールすることで、過敏性腸症候群の症状を改善します。下痢型の過敏性腸症候群に用いる薬剤であり、以前は男性のみに使用されていましたが、現在では女性に対しても使用が認められています。女性の方が副作用として便秘が生じやすいと言われています。
2)消化管運動改善薬
下痢型、便秘型のいずれにも使用します。下痢型に対しては腸の動きを抑え、便秘型に対しては腸の動きを活発にすることで効果を発揮します。
③)乳酸菌製剤
腸内環境を整え、下痢や便秘、腹部の不快な症状などを改善します。
④便秘薬
便秘型に対して使用します。大腸に水分を取り込むことにより便を軟らかくしたり、腸を刺激して便を出しやすくします。最近では、腹部の不快な症状を改善させる効果のある薬剤も登場しました。
⑤止瀉薬
これとは逆に下痢型で、下痢の症状がひどい場合などに頓服で止瀉薬を用いることもあります。
⑥漢方薬
下痢型や便秘型といった病型や、体質(体力や冷えの有無など)にあわせて処方薬を選択します。当クリニックでも通常の薬剤で効果が乏しい場合には積極的に漢方薬を使用しています。この他、うつ状態や不安が強い(トイレに行けない不安など)場合に抗不安剤を使用することもあります。
今回は過敏性腸症候群について説明させて頂きました。もし上記に当てはまるような症状がある場合は、本症の可能性がありますので、ご遠慮なくクリニックまでご相談下さい。先ほども述べましたように、他の病気で似たような症状を起こす可能性もありますので、最近まで採血検査や大腸カメラなどの検査を受けられていない方は、一度検査を受けることをお勧めいたします。当クリニックでも鎮静剤を用いた苦痛の少ない大腸カメラ検査を日々行っております。ポリープが見つかった場合には必要に応じて日帰り大腸ポリープ切除も積極的に行っておりますので、ご心配な方はいつでもご相談ください。24時間のWEB予約からも大腸カメラの予約が可能となっておりますので、ご希望の方は是非WEB予約からご予約ください(電話での予約も可能です)。夜間はかなり冷え込むようになってまいりました。体調には十分お気を付けてお過ごし下さい。
大腸カメラってつらくない?
こんにちは、まだまだジメジメしたうっとうしい天気が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?
今日は、当院でも予約が増えてきた大腸の内視鏡検査についてお話ししたいと思います。大腸カメラってつらくない?とちまたでよく耳にすることがあります。大腸カメラは肛門から内視鏡を盲腸まで挿入して、そこから引き抜きながら詳しく大腸全体の粘膜面の変化を観察する検査になります。胃カメラの場合には、胃の形に多少の個人差はあるものの、似たようなルートを十二指腸まで観察する検査ですが、大腸は腸の長さだけでなく、腸の屈曲の程度も人によって千差万別で、複雑に屈曲していたり手術等の癒着があったりすると、内視鏡の挿入がむずかしくなる場合があり、挿入時に苦痛を生ずる原因になります。
また、胃カメラの場合は絶食で来院すれば即日での検査も可能ですが、大腸カメラの場合は食事を抜いても大腸に便が残っているため、そのままでは詳しい検査はできません。このため、大腸検査前の前処置が必要となり、通常は前日に専用の検査食を食べてもらい(ご希望により検査食を食べなくても検査は可能です。食事内容はスタッフから事前に詳しく説明させていただきます。)、前々日と前日の就寝前に水薬の下剤を飲んで頂きます。そして検査当日に、大腸の中に残った便を出して腸の中をきれいにするために、腸管洗浄液という下剤を飲んでもらいますが、この量がかなりの量になるため前処置がつらいと言われる方も少なくありません。当院では何種類かのお薬を用意して、皆様に前処置の負担が少しでも軽くなるように配慮しながら、検査のご予定を立てております。また下剤の内服場所についても、院内の個室で飲んでいただくか、自宅で飲んでいただくか選択できますので、お気軽にご相談ください。
当院ではなるべく検査時の苦痛が少なくなるように、鎮静剤を使用しての検査も行っております。「初めての内視鏡検査ですごく心配」、「以前に施行した検査がすごく苦しかった」などの理由で、大腸カメラを受けることを躊躇されている方はぜひ一度ご相談ください。検査中は眠ったような状態で、ウトウトしながらリラックスして検査を受けていただくことが可能です。検査後もベットの上に横になったままでリカバリースペースでお休みいただき、目が覚めたら検査結果を診察室で詳しく説明させていただきます。
「最近便秘がひどくなった」、「時々便に血が混じる」、「お腹が張ったり、下腹部が痛くなる」、「血便や下痢がしばらく続いている」などの症状がある方や、健診・人間ドック等で便潜血が陽性であったり、貧血を指摘されたりした方は、大腸に重大な病気が潜んでいる可能性もありますので、ぜひ一度大腸カメラを受けていただくことをお勧めします。大腸カメラやお腹の症状などについて些細なことでもご質問やご相談がおありの時は、お気軽にお問い合わせください。
まだまだ蒸し暑いジメジメしたお天気が続きますので、体調にはくれぐれもご自愛いただきますようにお願いいたします。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
腹部超音波検査について
こんにちは、院長の石橋です。ジメジメした梅雨空が続く中、いかがお過ごしでしょうか?今回は、当院で内視鏡検査以外に積極的に施行している腹部超音波検査についてお話したいと思います。
腹部超音波検査は、腹腔内ならびに骨盤内臓器の病変や腹水、出血などの有無を、体に負担なく調べることができる検査法です。検査自体は、おなかに超音波の透りを良くするゼリーを塗ってから、超音波を発するプローブという機械を当てて、反射した超音波を画像化して調べます。超音波は、臓器の硬さや厚さ、しこりの有無などによって、反射の仕方が異なるため、臓器の腫れや萎縮のみならず、臓器内の腫瘤や腹水・出血などが診断できます。またX線検査では放射線の被ばくのリスク、造影剤使用時のCT検査やMRI検査では、造影剤によるアレルギーや腎機能障害のリスクが少なからずありますが、超音波はいくら体内に照射しても問題はありません。おなかにプローブを当てて調べるだけなので、検査時の苦痛もなく身体に優しいだけでなく、肝臓、胆のう、すい臓、腎臓、脾臓、前立腺、膀胱など多くの臓器を一度に調べることが可能です。また超音波検査のみで診断が確定するわけではありませんが、肝硬変症、肝臓がん、肝血管腫、胆のうポリープ、胆のう結石、急性胆のう炎、胆のうがん、急性膵炎、慢性膵炎、膵がん、膵のう胞、腎結石、尿管結石、腎臓がん、脾腫、前立腺肥大症、前立腺がん、膀胱がんなどの疾患の診断に有益な情報が得られます。さらに胃・大腸などの進行がん、胃腸炎、虫垂炎、腸閉塞などの診断においても、超音波検査が威力を発揮するケースが少なくないことを経験しています。
当院では、医師の診察室のベッドサイドに超音波診断装置を置いており、何らかの腹部症状があり来院された方や、健康診断や人間ドックで異常を指摘された方などに、積極的に超音波検査を実施しています。また、胆のうポリープや肝血管腫などの経過観察やがんの治療後のチェックのために定期的な検査も行っており、もし気になる症状が続いていたり、健診・ドックで異常を指摘された場合には、お気軽にご相談ください。
もし超音波検査をご希望の場合は、事前の食事は抜いてきていただくほうが、食事の影響を受けずに精度の高い検査が受けられることが多いと思われます(午前の診療では朝食、午後の診療では昼食抜きで)。特に超音波検査で観察されることが多い胆のうについては、食事を摂ると収縮するため、結石やポリープなど詳細な観察が困難となる場合もあり、絶食での検査をお勧めしています。また膀胱を観察する場合には、尿を溜めておくことが必要です。体格の大きい方、太った方、腸管ガスの多い方などは、超音波による描出自体が難しいことが少なからずありますが、3万件を超える数多くの超音波検査の臨床経験がありますので、ご安心ください。
超音波検査で、腫瘤がある、腹水がある、リンパ節が腫れているなどの異常が見つかった場合には、腫瘍マーカーなどの血液検査や造影CT・MRI検査、PET検査などの精密検査が必要になります。血液検査は当院でもできますが、CT・MRI検査やPET検査などは他の医療機関などで受けていただくことになります。当院では、CT,MRIなどの画像診断を専門とするクリニックや仙台厚生病院、仙台医療センターなどの高次医療機関との連携もとれておりますので、検査所見にあわせて適切なタイミングで各医療機関にご紹介させていただきます。腹部超音波で異常が見つかった場合には、おなかの中の臓器に何らかの病気が潜んでいる可能性があります。日ごろから腹部症状が気になる方はもちろんのこと、自覚症状がなくても健診、ドックなどで異常を指摘された方など、早期発見・早期治療のために、一度超音波検査を受けていただくことをお勧めいたします。
胃カメラ検査について
7月15日から、いよいよ令和2年度仙台市胃がん検診胃内視鏡検査が始まります。当院にも検診の予約の電話が入ってきており、少しずつ地域の方々に認知されてきていることを実感しております。
当院では、積極的に鎮静剤を用いた苦痛の少ない胃カメラ検査を実施しております。胃カメラ検査には、口からカメラを挿入する経口内視鏡と鼻からカメラを挿入する経鼻内視鏡の2種類があります。通常は経口内視鏡にて検査を行うことが多いと思われますが、のどを通る際に“おえっ”となる反射(咽頭反射)を伴うことが多く、胃カメラ検査が“苦しい、きつい”という印象を持たれる原因になっています。鎮静剤を用いた胃カメラ検査では、この“おえっ”となる反射をできる限り少なくし、リラックスした状態で検査を受けることが可能です。このため、安定した状態で検査が施行できるので、咽頭反射が頻回に起こって条件の悪い中で検査を施行するよりも、より細かな観察ができ、より短時間で検査を終了することが可能です。これに対し、“車で来院した”、“当日の車の運転がどうしても必要”、“鎮静剤を使うのが心配”などの理由から鎮静剤を使えない方に対しては、鼻からの胃カメラ検査をお勧めしています。鼻からの胃カメラ検査では、“おえっ”となる反射の起きやすい部分を避けて食道に挿入されるため、比較的楽に検査を受けることが可能と思われます。ただし、鼻腔(鼻の孔)が狭い、鼻血が出やすい方などでは、挿入時の違和感や検査後の鼻出血が生じる場合があります。このため当院では、この検査の前処置については、鼻腔の十分な局所麻酔と少しでもカメラが余裕をもって挿入できるようにスティック法という処置を全例に行って、少しでも挿入時のトラブルが減るように心がけております。
また鎮静剤を使用する場合には、必ず血圧と血中の酸素濃度をチェックしながら、少しずつお薬を入れてお薬による副作用(特に呼吸が弱くなること)が極力起きないように、注意しながら検査を施行しておりますのでご安心ください。検査が終了したら、30分から1時間程度ベットの上でお休みいただき、しっかりとお薬の効果がなくなったことを確認してから、検査結果の説明、ご帰宅になります。ただしお車の運転は、鎮静剤の使用時には出来ませんので、お気を付けください。
胃カメラ検査にかかる費用については、1割負担の方で1500円程度、3割負担の方で4500円程度になります。また粘膜の一部を採取して調べる組織検査が追加になった場合には、それぞれ1割負担の方で3000円程度、3割負担の方で9000円程度になります。
検査に際して経口内視鏡にするか、経鼻内視鏡にするかは、患者様のご希望により選択が可能です。もしどちらの検査を受けるのが良いか判断に迷う場合でも、詳しくお話をうかがって、より適切な検査の方法を一緒に決めさせていただきます。また当日来院された方でも、事前の食事をとっていなければ(午前の検査であれば朝食を食べていない、夕方の検査であれば食後8時間近く経っている場合)、検査枠の空き状況によって即日の検査も可能ですので、胃カメラ検査で何かご相談があれば、お気軽にご来院ください。
まだまだ梅雨空とムシムシした天気が続きますが、体調管理にはお気を付けてお過ごしください。
ピロリ菌について
梅雨空が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?開業からあっという間に2週間が経過しましたが、院内の設備や内視鏡検査のオペレーションもだいぶ整い、皆様をお迎えする準備が出来てきていることを日々実感しています。
さて皆様は、「ピロリ菌」についてはご存じですか?ピロリ菌が発見されるまでは、強酸の環境にある胃内には細菌は存在しないと考えられていましたが、胃の中にある尿素からアンモニアを生成し、周りの酸を中和して生きている細菌がいることがわかり、それがピロリ菌でした。ピロリ菌は胃に感染することにより、長期にわたって胃粘膜の炎症を起こして慢性胃炎になったり、消化性潰瘍の原因になると考えられています。このように慢性化した炎症により、胃粘膜の防御機能が低下して、ストレスや塩分の多い食事、発がん物質などの攻撃を受けやすい状態になり、潰瘍や胃がんを起こしやすい下地がつくられてしまうのです。ピロリ菌感染があっても慢性胃炎のままで、潰瘍や胃がんを起こさない人のほうが多いとされていますが、除菌しない限り胃炎が治ることはないので、胃がんのリスクとなります。除菌することにより、ゼロにはなりませんが、胃がんのリスクを減らすことが可能です。
ピロリ菌の感染の有無を調べるには、いくつかの検査方法があります。尿素呼気試験、血液検査・尿検査(ピロリ抗体)、便検査(便中ピロリ抗原)や胃カメラ検査時に粘膜を採取して調べる方法などがあります。しかし、いずれの検査も100%の精度ではないため、1つの検査で陰性と診断された場合には、他の検査も併用して行うことが推奨されています。
ではピロリ菌の治療はどのようにすればよいでしょうか。除菌療法といって、3種類のお薬(2種類が抗生物質、1種類が制酸剤です)がパック製剤になったものを1週間内服します。きちんと内服すれば、約9割の方が除菌されます。しかし、ペニシリン系の抗生物質が入っているため、ペニシリンアレルギーのある方は治療出来ませんので注意が必要です。もし除菌に失敗した場合でも、二次除菌が保険上認められており、一種類の抗生物質が変更となったパック製剤を一次除菌と同様に1週間内服します。二次除菌で、除菌されなかった方の多く(約9割)が除菌されると言われており、一次除菌後に除菌できたかどうかの効果判定を行い、除菌できていない場合は二次除菌をきちんと受けることは重要と考えます。
次に除菌判定の検査についてですが、当院では基本的に除菌治療終了後から8週間以降に尿素呼気試験による判定を行います。この時に注意する点は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)という制酸剤を内服していると正確な判定結果が出ないことです。そのためこの薬剤を内服している場合は、2週間以上内服を休んでから検査を行います。
ピロリ菌の感染が確認された場合の除菌治療は大事ですが、除菌によりがんのリスクがゼロになるわけではありません。除菌後も定期的な胃の検査(可能なら胃カメラ検査)を受けるようにお話しさせていただいておりますが、もしピロリ菌の検査・治療に関してのご質問等がある場合はお気軽にご相談ください。